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個人事業の引継ぎ

小売店や飲食店などの個人で経営している事業は、株式会社や有限会社(特例有限会社)などの法人と事業承継のすすめ方は少し違います。

同じ事業として引き継ぐ場合、法人と同じく「先代の思い」を理解し大切にして、お客様から親しまれ、取引先からも評価されてきた商品やサービスなど、事業の強みを十分に理解して引き継ぐことは法人の場合と同じです。一方で、店舗や工場が賃貸でなく先代名義だったり、設備や商品、材料を引き継いだりする場合には注意が必要です。事業に必要な資金なども後継者が用意しなければいけません。

 ※先代が生前の場合の手続きを基本にお話しします。

 

◇先代の廃業と後継者の開業の手続き

個人事業の場合は、先代が廃業し後継者が開業することによって事業を引き継ぐことが一般的な流れです。具体的には税務署に廃業届と開業届を提出します。

株式会社の場合は株式を引継ぐことによって会社の所有者が代わり、名前や会社が持つ現預金や不動産などの資産や借入金なども一般的にはそのまま引き継がれますが、個人事業の場合、言ってみれば、お店の名前が変わらなくても、全く別の個人に経営が代わるということになります。

なお、青色申告や専従者の届出や特に従業員を雇っている場合の社会保険関係の届出等も必要になるので、専門家にも相談してください。

 

◇事業に使っている不動産や資金などは?

店舗や工場などの不動産を先代が所有している場合は、先代から賃借するか、また贈与や買い取りなどが必要となってきます。商品や原材料の在庫を引き継ぐ場合は基本は有償とされており、売掛金や仕入れの買掛金を引き継ぐかどうかも決めなければいけません。

不動産については生計が同じかどうかによって賃貸借の方式が変わることや、買取ではなく贈与の場合には税金も関係することから、税理士などの専門家に相談しましょう。

 

◇引き継ぐにあたってのポイント

・いつ引き継ぐか

交代時期に特に決まりはなく、ご病気など、差し迫った事情がなければ、ある程度余裕をもって予め交代時期を決めて計画的に準備をすすめることがいいでしょう。ただ、先代の廃業後には税務署への確定申告が必要になり確定申告を一度に済ませるため、12月末を開業・廃業のタイミングにされる事業者もおられます。

・屋号はどうする

特に商標登録などで問題にならない名称であれば、お客様や取引先に親しまれた屋号をそのまま使われるのがよいと思われます。

 

・引き継ぎ後の資金準備

先に触れたように新たに賃借料が発生したり、商品や原材料の買取資金が必要だったり、引き継ぎ後は一定の運転資金が必要になります。売上げ・利益計画を作るとともに、当面の資金繰りを試算し、必要に応じて金融機関から融資などを早めに検討しましょう。

 

・法人化の検討

売上げや利益の状況にもよりますが、先代の手で法人化し、その法人を、株式の形で後継者に引き継ぐことも検討されたらいかがでしょうか。

 

法人化のメリット・デメリットは別の機会に解説します。