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「後継者が経営しやすい環境を整える」ことが基本

 家族や従業員の全員が後継者を応援しようという雰囲気づくりから始まって、役員体制や社内の組織、事務や経理の担当、取引先や金融機関との関係づくり、借入金の返済や経営者保証の問題、そして株式の集中や株主との関係...。後継者に引き継ぐ前に、問題があれば解決したり、道筋をつけておいたりすることが必要となります。

 事業承継に向けて整理しておくことはいろいろとありますが、結局は「事業を引き継いだ後に後継者が経営しやすい環境を整えること」が検討する際、基本におくべきことです。

そのためにも、早めに課題を整理して十分に時間をかけて取り組むことが求められます。

 

 まず何といっても、後継者を決める時に家族と十分に話し合うこと、決定したら社長から社員に対して正式に説明する機会を持つこと、そのうえで経営者としての教育や業務を通じて社員から信頼されるような後継者に育てることが第一です。具体的な内容は別の機会にご説明します。

よくあるのは以下のようなケースです。

 

◇兄弟や姉妹など、複数の候補者が社内にいる場合

  どちらか一方を後継者にする場合、もう一人が納得し協力してもらうことが必要になってきます。最近は社内に後継者がいない会社が多い一方で、いる場合は兄弟とも社内で働いているといったケースもよく見られます。そして、兄弟仲が良いところばかりではありません。子供であれば、親として十分に話し合う機会を作ること、後継者以外も取締役にしたり担当分野を分けたり、また株式の配分も工夫します。

さらに社長は、しばらくの間、会長職などでサポートしていくことも大切です。

 

◇高齢社員の存在

  特に息子さんに引き継ぐ場合は、社員のほとんどが後継者よりも年上という会社がよくあります。特に、社長と同年代で創業当初から一緒に苦労してきた社員もおられ、事業承継と社員の世代交代のタイミングが同じという会社は多いですね。社長の交代に合わせて一緒に退職してもらう場合もありますが、一方で特に製造業の場合に技術面の引継ぎが十分にできていない場合は、しばらく残ってもらって後輩の育成をお願いすることも必要かもしれません。

 

◇分散している株式や名義株主

分かりやすいのが株式の分散の問題です。後継者にとっての叔父・叔母が株主だったりすると、そのままにしておくと後々言い出しにくい。また、会社法改正前に設立された会社は、当時7人の株主が必要だったため、知り合いや親戚にお願いして名前を借りた、いわゆる「名義株主」が残っているケースも多くみられます。決算書に記載されている株主一覧の株式数を合計しても発行株式数に足りず、社長に確認したら「そう言えば会社をつく継ときに○○さんに株主になってもらった」とか。実際には社長がお金を出して名前を借りただけという場合が多く、そのままにしていて社長が亡くなったりすると、後々面倒です。

社長交代に合わせて、可能な限り株式は集約しましょう。

 

 

 その他、金融機関からの借入金に対する個人保証や会社に対する社長が持っている土地や建物の貸付けなどもあり、特にお金が絡む問題は「後継者が経営しやすいよう」計画的に整理していきましょう。