「息子は別の会社に勤めていて後継者がいない」「どこか引き受けてくれる会社はないか」といった相談がよくあります。
でも、いろいろお話を伺いながら、あらためて今度は社員に話をしてみたら実はヤル気だった、製造業で「後継者は息子に」と思い断られたのであきらめていたが、娘さんに話をしたら引き継ぐきになった、といった話もお聞きます。
後継者の範囲を狭く考え、早めにあきめていませんか?
新車や中古車も販売している、ある自動車整備工場ケース。
60歳代後半の社長と3人の社員、社長の奥さんが経理や事務を担当していました。息子さんが二人いましたが、別の会社に勤めていて会社を引き継ぐ意思はなく、どこか引き継いでくれる会社がないか、そうでなければ廃業したいといった相談です。
借地でしたが敷地は広く立派なショールームもあって、周辺の会社から車検や一般整備を引き受けていましたが、新車ディーラーとの競争が激しく売上高は減少傾向で、ここ数年は赤字が続いていました。
あらためて息子さんに意向を確認してもらいましたが、整備士の資格も持っておらず、やはり会社を継ぐ気がない。それでは社員に話をしてみたらと勧めたら、実は社員の一人は将来的に自分の店を持ちたかったと考えていることが分かりました。手を挙げた社員は30歳代前半でしたが、社長はこれまで、そんな話をしたことが無かったですね。
整備工場を一から立ち上げるのは、資金の確保や陸運局の認証を得るのも大変です。
ただ、借入金も残っているし赤字の会社を引き受けるは覚悟がいるもの。後継者と一緒に経営改善計画を作り、さらに経理は後継者の父親が手伝ってくれることになりました。
会社を継いだのは5年ほど前の話ですが、現在も若い社長が社員と一緒に頑張っていて、経営は順調のようです。
一般的に、後継者を選ぶ順番は、まず子供をはじめとする親族、次に社員、いなかったら社外から候補者を探す、そしてM&Aと言われてきました。
かつては後継者のうち「息子や娘」が占める割合は9割といった時代もありましたが、年々減少し、現在は5~6割といった調査結果も出ています。また、M&Aも仲介会社や金融機関に加えて、最近は行政が運営する相談窓口やインターネットでのマッチングサイトも増えています。M&Aについても、そのうちに解説しますが、社員数人の会社や個人事業、赤字や債務超過の会社も「買い手」が見つかるケースが増えています。
「後継者がいない」という会社は、まずは「周りにいないか」とじっくり考えたうえで、M&Aも選択肢として取り組みましょう。