後継者が決まっていても、何から取り組んだらいいのか、と言うのはよくある相談です。
多くの社長にとって事業承継は初めての経験であり、2代目・3代目の社長でも社長を引き継いだのは遠い昔の話で、また決して上手くいった会社ばかりではありません。先代の社長が病気で急に倒れて、とか、特に事前の準備もなく社長になって苦労したという話もよくお聞きします。
まずは「いつ社長を交代するのか」の目安を決め「後継者の意思を改めて確認し確定」しましょう。
◇いつ社長を交代するかを決める
先日も書きましたが、まずは、何といっても社長交代の目標時期を決めることがスタートです。これまで長年ご自分で育ててきた会社の社長を譲る、ということは、なかなか決断するのが難しいですが、交代時期を決めないと、それに合わせて取り組む内容やスケジュールが決まらず、ズルズルと先延ばしになることが多いです。
と言って何年後に交代すると決めるのが、また、なかなか難しい。
そんな時に、よくお話しするのは、「社長が70歳になる年」とか「後継者が30歳になる年」とか、キリのいい年齢で決めたり、会社の「50周年」とか会社の創業年数で決めたりすることを奨めます。
「仮の交代時期」でもいいのです。
ただ、後継者の育成にかかる年数は考えないといけません。「中小企業白書」(中小企業庁)に掲載されているアンケートでは、後継者の育成を含め事業承継に必要な期間として5割以上の社長が3~5年と回答しています。
十分に余裕のある期間を設定して時期は決めましょう。
◇後継者の意向を確認し確定させる
「後継者は決まっている」ことを前提に相談されるのですが、本当に継ぐ気があるのか、改めて確認しましょう。
社長は息子や社員が継いでくれると思っていても、いざ話をしてみたら断られた、というケースはよく聞きますし、特に社内に兄弟がいる場合に、長男が社長になるのであれば辞めると次男が言っているというケースも何社か経験しています。ある会社では、社長と社長の奥さん、息子二人の打ち合わせに入って話をしている途中で、次男がいきなり「俺は辞める」と席を蹴って出て行き、その会社は結果的に交代時期を先延ばしすることになったという経験もあります(社内に息子2人がいる場合などについては、別の機会に解説します)。
本人に意思を確認するとともに、家族の理解が重要です。兄弟など複数の親族が社内にいる場合は家族間のその後の関係にも大きく響きますし、社員に引き継ぐ場合も、特に中小企業の社長の場合は、株式や土地・建物など、会社の経営は個人の財産と密接に関係しています。
以上が、最初に決める2つの点ですが、そのうえで整理していくことや事業承継計画の作り方は、次回、解説します。